アクアリウムにおける2つのろ過機能

水槽の維持にとって必要な、ろ過器(フィルター)には大きく分けて2つの分類がある。物理ろ過と生物ろ過である。この2つについて話していこう。

物理ろ過とは、水中を浮遊している固形粒子をろ材によって機械的に捕捉し、水から分離する作用である。ここで重要なのは、化学的反応を伴わないという点であり、あくまで「粒子として存在しているもの」を物理的に取り除く働きである。したがって、水に完全に溶解しているアンモニアや亜硝酸、糖質などの溶解性物質は除去できない。 溶解
物理ろ過の対象となるのは、魚のフンや食べ残し、枯れた水草の破片といった目に見えるゴミだけではない。肉眼では確認できないほど細かい有機物の微粒子や微生物やデトリタス、濁りの原因となるコロイド状の粒子なども含まれる。肉眼で見えないからといって溶けているわけではなく、粒子として水中を漂っている限り、物理ろ過によって捉え水中から除去可能である。
透明度の高い水はこれらの肉眼でははっきりと認識できない微細な粒子がどれだけ少ないかと言うはなしであり、細かな粒子をいかにうまく取り除けるかが水槽の水が綺麗だと感じられるかと言うことである。
この物理的なろ過能力はろ材の目の細かさに依存する。ろ材の繊維や孔が細かいほど、より小さな粒子まで捕捉できるため、物理ろ過の精度は高まる。しかしその反面、細かいろ材ほど目詰まりが早く進行する。粒子が蓄積すると通水抵抗が増し、水流量が低下し、最終的にはフィルターとしての機能が停止する。この「捕捉能力の向上」と「通水性の低下」は構造的にトレードオフの関係にある。
さらに、目の細かなウールマットでさえとらえられないような浮遊物がありそれが水槽の白濁や水がスッキリとしないもやもや感の元である、それらをろ材がとらえられるようになるためにはろ材にバクテリアが付着し増殖しバクテリアの膜やコロニーが形成されることで、ろ材の表面はより微細な構造となり、粒子の捕捉能力が向上していく。しかし同時に、目詰まりはさらに加速する。時間経過とともに物理ろ過はろ材表面でのバクテリアの増殖バイオフィルムの発生発達によりより微細な粒子をとらえられるように物理的に強化される側面を持つが、それは同時に目詰まりによるろ材の通水機能停止へ向かうプロセスでもある。
このため実際のフィルターのセッティングでは、ろ材をどの様な順番で入れるかやどの様なろ材を使うとよいかと考えることとなる。物理ろ過の本質は素早く細かな浮遊物を捉え、その効果が長く続くかと言うことである。

ここからは生物ろ過について話していこう
アクアリウムではアンモニアイオンが硝酸イオンに変わる硝化反応が有名だがその反応は生物ろ過の流れの1つでありその前反応も、大切である。

生物ろ過を有機物分解から硝化反応までの生化学的プロセスとして整理する。
生物ろ過は単なる「アンモニアの酸化」だけではない。実際には、水槽内に持ち込まれる有機物の分解から始まる一連の微生物代謝の連鎖である。
まず、餌・排泄物・枯死組織などの有機物は、多くが高分子構造を持つ。これらはそのままでは無機化されないため、従属栄養細菌(有機物分解菌)によって酵素分解を受ける。タンパク質はプロテアーゼによってペプチドへ、さらにアミノ酸へと分解される。脂質や炭水化物もそれぞれ分解酵素により低分子化される。
次に、アミノ酸などの含窒素化合物は脱アミノ反応を受け、アンモニア(NH₃/NH₄⁺)が生成される。この段階を一般に無機化という。ここまでが有機物の分解過程であり、水中の有機窒素は無機窒素へと変換される。この反応が大きな物質が細かく分解水へ溶解イオン化されることで水の透明度はあがり、TDSメーターの数値(EC値)も上がってくる。

その後、生成されたアンモニアは独立栄養性の硝化細菌によって酸化される。硝化は二段階反応で進行する。
第一段階では、アンモニア酸化菌(例:Nitrosomonas属など)がアンモニアを亜硝酸(NO₂⁻)へ酸化する。この反応は酸素を消費する好気的反応である。
第二段階では、亜硝酸酸化菌(例:Nitrobacter属など)が亜硝酸を硝酸塩(NO₃⁻)へ酸化する。これも同様に酸素依存的である。
この一連の流れをまとめると、
高分子有機物
→ 低分子化(タンパク質 → ペプチド → アミノ酸)
→ 脱アミノ反応によるアンモニア生成(無機化)
→ 亜硝酸への酸化
→ 硝酸塩への酸化
という段階的な生化学的分解プロセスである。
これらの反応に関与する微生物は、水中を浮遊しているのではなく、固体表面に付着してバイオフィルムを形成しながら活動する。ろ材は単なる通水媒体ではなく、微生物の定着基盤である。したがって、生物ろ過能力は水量ではなく、比表面積と通水条件に依存する。
さらに重要なのは酸素供給である。硝化細菌は好気性であり、硝化反応は電子受容体として酸素を必要とする。溶存酸素が不足すると反応速度は著しく低下し、極端な場合は嫌気的条件に移行し、別の代謝経路(還元反応)が優勢になる可能性がある。この酸素不足による還元反応は腐敗だったり水槽環境の崩壊や毒の発生を起こす大抵は悪い状態である。

また、硝化反応は比較的エネルギー効率が低く、硝化細菌の増殖速度は遅い。そのため、生物ろ過は立ち上がりに時間を要し、環境変動(洗浄、乾燥、停止)に対して脆弱である。
とは言え経験上、水道水でろ材を何度か洗浄する程度で壊滅的に機能が停止する様なものでもなさそうだ

総括すると、生物ろ過とは、従属栄養細菌による有機物の酵素分解と無機化独立栄養性硝化細菌によるアンモニアの段階的酸化という二系統の微生物活動が連続的に進行する現象である。そしてそれは、ろ材表面に形成された微生物群集、十分な酸素供給、安定した通水によって初めて成立する。

生物ろ過による生化学的反応の成立と、水の透明度を向上させる物理ろ過の作用は、本質的に別の機能である。
生物ろ過は、水中に溶解している窒素化合物を微生物の代謝によって段階的に変換する反応系である。有機物は分解菌によって低分子化・無機化され、アンモニアが生成される。続いて硝化細菌がアンモニアを亜硝酸へ、さらに硝酸塩へと酸化する。この一連の反応は水中で“見えないレベル”で進行する化学的変換であり、水の見た目を直接改善する機能ではない。
一方、物理ろ過は水中を浮遊している粒子を機械的に捕捉することで、水の濁りを除去し透明度を向上させる作用である。これは粒子の除去であって、溶解しているアンモニアや亜硝酸を処理する能力は持たない。
重要なのは次の点である。
水が透明であることは、生物ろ過が成功していることを意味しない。
逆に、生物ろ過が正常に機能していても、水が完全に無色透明になるとは限らない。
アンモニアや亜硝酸は無色透明であり、高濃度でも水は澄んで見える場合がある。したがって、「見た目がきれい=安全」という判断は科学的には成立しない。
また、立ち上げ初期の水槽では、硝化菌の定着が進みアンモニアや亜硝酸が安定していても、バクテリアの増殖や微粒子の浮遊によって白濁が発生することがある。この場合、生物ろ過は進行していても、物理的な濁りが残っているだけである。
両者の違いを整理すると以下のようになる。
物理ろ過は「粒子を除去する機構」であり、視覚的な透明度に直結する。
生物ろ過は「溶解物質を変換する反応系」であり、毒性低減に直結する。
両者は相補的ではあるが、機能的には独立している。水槽管理においては、透明度と化学的安全性を区別して評価することが重要である。

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